結論:1歳半の遊びで大切なのは「教えること」より「一緒に楽しむこと」
1歳半頃になると、歩けるようになり、言葉への理解も進み、「自分でやってみたい」という気持ちが強くなる時期です。
この時期の子どもに必要なのは、特別な教材や高度な知育ではありません。
子どもが興味を持ったことを自由に試し、身近な大人とやり取りを楽しむ経験が、発達の土台になります。
こども家庭庁は、乳幼児期の育ちは、子ども自身が遊びや体験を通して周囲の環境と関わる中で形成されるものであり、身近な大人との関係性が重要であると示しています。
(こども家庭庁『はじめの100か月の育ちビジョン』2023)
そのため、1歳半の家庭での遊びでは、
- 子どもの「やってみたい」を尊重する
- 遊びの中で言葉をかける
- 安心して探索できる環境を整える
ことが大切です。
この記事では、1歳半頃の発達の特徴を確認したうえで、家庭でどのような遊びや関わりが発達を支えるのかを紹介します。
1歳半はどのような時期?
1歳半頃は、乳児期から幼児期へ移行する大きな節目です。
身体的には歩行が安定し、行動範囲が広がります。また、自分の意思を表現する力も少しずつ育っていきます。
一方で、危険を予測したり、自分の感情を十分にコントロールしたりする力はまだ発達途中です。
そのため、大人が安全な環境を整えながら、子どもが自由に探索できる機会を作ることが重要です。
厚生労働省の『保育所保育指針解説』では、乳幼児期の子どもは、身近な環境に自ら関わり、様々な経験を積み重ねながら発達していくことが示されています。
(厚生労働省『保育所保育指針解説』2018)
1歳半頃に見られる主な発達
① 体を動かす力が大きく発達する
1歳半頃になると、
- 歩く
- 方向転換する
- 階段や段差に挑戦する
- 物を持って運ぶ
- 手先を使って操作する
など、全身を使った活動が増えます。
また、手や指の細かな動きも発達し、物をつまむ、入れる、積むといった操作ができるようになります。
こうした動きは、運動能力だけでなく、「試してみる」「工夫する」といった認知発達にもつながります。
厚生労働省は、保育において、子どもが遊びを通して身体感覚を十分に働かせ、様々な経験を積むことの重要性を示しています。
(厚生労働省『保育所保育指針』2017)
② 言葉の理解が進み、やり取りが増える
1歳半頃は、話せる言葉の数には個人差がありますが、大人の言葉を理解する力が大きく伸びる時期です。
例えば、
「靴を持ってきて」
「お水飲む?」
など、日常的な簡単な言葉を理解できるようになります。
また、指差しをしたり、興味のあるものを大人と共有しようとしたりする姿も見られます。
このような「子どもが伝える→大人が応える」というやり取りは、言葉や社会性の発達を支えます。
乳幼児期の発達では、保護者など身近な大人との応答的な関わりが重要であることが、発達科学の研究でも示されています。
(Center on the Developing Child at Harvard University, 2004)
③ 「なぜ?どうして?」を試す時期
1歳半頃の子どもは、周囲のものに興味を持ち、繰り返し試すようになります。
例えば、
- 積んだものを崩す
- 箱から物を出し入れする
- ボタンを押して変化を見る
- 同じ動きを何度も繰り返す
といった行動です。
大人から見ると「同じことを繰り返している」ように見えても、子どもにとっては、
「こうするとどうなるのか」
「もう一度試したらどうなるのか」
を確かめる大切な学習です。
こども家庭庁は、乳幼児期の遊びや体験が、子ども自身の主体的な学びにつながる重要な機会であるとしています。
(こども家庭庁『はじめの100か月の育ちビジョン』2023)
1歳半の発達を支える家庭での関わり方
ここまで、1歳半頃の子どもに見られる発達の特徴について紹介しました。
では、家庭ではどのような関わりをすると、その発達を支えることができるのでしょうか。
大切なのは、子どもに何かを「教える」ことよりも、子ども自身が興味を持ったことを安心して試せる環境をつくることです。
発達を支えるために家庭で意識したい3つのこと
① 子どもの「やってみたい」を尊重する
1歳半頃の子どもは、「自分でやりたい」という気持ちが強くなる時期です。
例えば、
- 自分で靴を履こうとする
- 食事を自分で食べようとする
- 何度も同じ遊びを繰り返す
といった姿が見られます。
大人から見ると、
「また同じことをしている」
「まだできないのに」
と思う場面もあるかもしれません。
しかし、この試行錯誤の時間こそが、子どもの学びにつながります。
こども家庭庁は、乳幼児期の育ちにおいて、子どもが主体的に環境と関わり、遊びや体験を通して学ぶことの重要性を示しています。
(こども家庭庁『はじめの100か月の育ちビジョン』2023)
そのため、大人はすぐに正解を教えるのではなく、
「どうなるかな?」
「もう一回やってみようか」
と見守ることが大切です。
② 子どもの行動や気持ちに言葉を返す
1歳半頃は、言葉の理解が大きく伸びる時期です。
この時期の子どもとの関わりで重要なのは、一方的に言葉を教えることではなく、子どもとのやり取りを増やすことです。
例えば、子どもが犬を指差したら、
「ワンワンいたね」
「大きいね」
と返します。
子どもがおもちゃを持ってきたら、
「持ってきてくれたんだね」
「ありがとう」
と気持ちを言葉にします。
こうした日常のやり取りが、言葉や社会性の発達を支えます。
ハーバード大学発達科学センターでは、乳幼児の発達には、子どもと大人の「応答的な関わり(serve and return)」が重要であることを示しています。
(Center on the Developing Child at Harvard University, 2004)
特別な時間を作らなくても、着替え・食事・散歩など、毎日の生活の中で十分に行うことができます。
③ 安全な環境の中で自由に探索させる
1歳半頃は、好奇心が強くなり、身の回りのものを自分で確かめようとします。
引き出しを開ける、
物を出し入れする、
高いところに登ろうとする。
大人にとっては困る行動でも、子どもにとっては周囲の世界を理解するための探索活動です。
ただし、1歳半では危険を予測する力はまだ十分ではありません。
そのため、
- 誤飲するものを手の届かない場所へ置く
- 転倒しやすい場所を整える
- 子どもが自由に動けるスペースを作る
など、安全を確保することが大切です。
厚生労働省は、乳幼児期の保育では、子どもが安心して環境に関わり、主体的に遊べる環境を整えることの重要性を示しています。
(厚生労働省『保育所保育指針解説』2018)
1歳半の家庭でおすすめの遊び3選
① 積み木遊び
積み木は、1歳半頃から楽しめる代表的な遊びです。
積み木遊びでは、
- 手指の細かな動き
- 力加減の調整
- 試行錯誤する力
- 空間を理解する力
など、さまざまな経験ができます。
最初は積むよりも、
「並べる」
「崩す」
「箱に入れる」
だけでも十分です。
子どもがしていることを否定せず、
「高くなったね」
「いっぱい並んだね」
と声をかけることで、遊びの経験がさらに豊かになります。
② ボール遊び
ボール遊びは、体を動かす楽しさを経験できる遊びです。
家庭では、
- 転がす
- 投げる
- 追いかける
- 箱に入れる
など簡単な遊びから始められます。
「ママにどうぞ」
「転がってきたね」
というやり取りを加えることで、運動だけでなくコミュニケーションの経験にもなります。
幼児期の遊びでは、身体活動を通した様々な経験が、身体能力や認知発達の基礎になるとされています。
(World Health Organization, 2019)
③ 絵本の読み聞かせ
絵本は、言葉や親子のコミュニケーションを育む遊びです。
1歳半では、最後まで座って聞けないことも珍しくありません。
途中でページをめくったり、好きなページだけ見たりしても問題ありません。
大切なのは、
「最後まで読むこと」
ではなく、
「一緒に絵を見て言葉を交わすこと」
です。
文部科学省は、乳幼児期の読書活動について、子どもが本に触れる経験や、周囲の大人との関わりが豊かな心の育ちにつながることを示しています。
(文部科学省『子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』)
まとめ:1歳半の遊びは「成長させる」より「一緒に楽しむ」
1歳半頃は、身体・言葉・考える力が大きく成長する時期です。
しかし、発達を促そうとして特別な教材を用意したり、毎日長時間遊ばせたりする必要はありません。
大切なのは、
- 子どもの興味を尊重する
- 遊びに付き合う
- 言葉で反応する
- 安心して挑戦できる環境を作る
ことです。
家庭での何気ない遊びや会話の積み重ねが、子どもの成長を支える大切な経験になります。
「今日は何を教えよう」ではなく、
「今日は何に興味を持っているのかな?」
という視点で、子どもとの時間を楽しんでみてください。
参考文献
- こども家庭庁(2023)『はじめの100か月の育ちビジョン』
- 厚生労働省(2017)『保育所保育指針』
- 厚生労働省(2018)『保育所保育指針解説』
- 文部科学省『子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』
- Center on the Developing Child at Harvard University(2004)“Young Children Develop in an Environment of Relationships”
- World Health Organization(2019)“Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age”
- こども家庭庁(2023)『はじめの100か月の育ちビジョン』
- 厚生労働省(2017)『保育所保育指針』
- 厚生労働省(2018)『保育所保育指針解説』
- Center on the Developing Child at Harvard University(2004)“Young Children Develop in an Environment of Relationships”

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